The Beatles ラバーソウル

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ラバーソウル(Rubber Soul)は、ビートルズ通算6枚目のアルバム

(イギリス公式アルバム)で、1965年12月発表。

僕は中学生の頃からビートルズを聴いているが、ラバーソウルは

その頃最初に好きになったアルバムかもしれない。

初期の「抱きしめたい」や「She loves you」等も勿論好きだったんだけども、

既に80年代後半だったためか、当時の中学生の耳には古臭くも感じたものだ。

(何周も回って、今は初期の曲がとても新鮮で素晴らしく感じる。とにかく

高揚感が凄いのだ。)

 

しかし、ラバーソウルは(というよりはラバーソウル以降は)違った。

それ以前とそれ以後で音楽性が全く違うのだ。

前作「ヘルプ」とラバーソウル。

この断絶感はなんだろう。

前者が極上のポップアルバムだとするなら、

後者は突然内省的かつ哲学的な感性を漂わせている。

彼らはまだ20代半ばだったはず。

ビートルマニアは依然として叫び続けていたが、

ビートルズはそんな世界を尻目に、俄然深みのある音楽を

創造するようになっていった。

そこに深い感動を覚える。

 

では、このアルバムからも独断的ランキングを。 

 

1位:The Word

なんでまたこんな地味な曲、と言ってはいけない

これは超名曲だ。

但し、この曲を単体で聴くと、感動は大きく減退する。

Nowhereman 〜 Think for yourself 〜 この曲

という流れで聴かないと意味をなさない。

恐らく上記3曲の流れがこのアルバムのハイライトだと思う。

このスリリングな展開がたまらない。

 

この曲を単体として見た場合、 メロディー、リズム、アレンジ、そして歌詞。

どれを取っても素晴らしい。完璧だと思う。

「愛」をテーマにした曲は、世界中に数多あれど、この曲の歌詞の世界観は

実はかなり独特で、「惚れた腫れた」のありきたりのラブソングとは一線を画す。

 

Say the word and you'll be free

その言葉を口にすれば、君だって自由になれる

Say the word and be like me

その言葉を口にすれば、君も僕のようになれる

Say the word I'm thinking of

僕の頭の中で思っている、その言葉を言ってごらん

Have you heard the word is 'love'

聞いたことあるだろ?それは「愛」

It's so fine, it's sunshine

本当に素晴らしく、まるで太陽の光が降り注ぐようだ

It's the word, 'love'

その言葉とは、まさに「愛」のことなんだ

 

ここからジョンのアイロニー溢れる歌詞がとても良い。

 

Everywhere I go, I hear it said

どこに行っても、その言葉を耳にしないことはない

In the good and bad books that I have read

いい本にも悪い本にも、その言葉が出てくるんだ

 

「愛」は確かに素晴らしいものなんだけど、

このような皮肉な表現こそが、この歌を特別なものにしている。

 

2位:Nowhere man

この曲を聴く時は、絶対に歌詞を読みながら聴かなければならない。

(この曲だけじゃないけど。。。)

恐らく「ヘルプ」以降だと思うが、ジョンの詩作にかなり変化が見られる

ようになったのがこの頃だろう。

当然ボブ・ディランの影響もあるだろうし、環境の激変つまりビートルズ

人気の凄まじさによる巨大なプレッシャーがこういった曲の背景にある。

だけど、聴く側にとっては、そんな裏事情はどうでもよい。

(よくはないけど。。。)

この歌には、人生における普遍的なテーマがあるからだ。

ある年齢に達すると誰もが経験する辛酸や絶望感が、この歌にはある。

それに喘ぎながらも、斜に構えた風にうそぶくような。

他人を軽蔑しているようでありながらも、共感もしているような。

マイナスなことを言っていながらも、自分を勇気づけるような。

 

Doesn't hava a point of view

自分の意見を持たず

Knows not where he's going to

自分が何処に向かっているかも分からない

Isn't he a bit like you and me?

だけど、ヤツは君や僕に似ていないか? 

 

ジョンの詩人としての才能はこの頃から爆発し始める。

頂点は無論ストロベリー・フィールズになる訳だが、この曲の完成度も高い。

コーラスのオーバーダビングがまた歌詞の複雑さに符合している。

 

 

最後に余談ながら。。。

ラバーソウルを語る上で、切っても切れない作品がある。

ビーチボーイズのペットサウンズである。

ブライアン・ウィルソンは、ラバーソウルを聴いて感動し、対抗する形で、

ペットサウンズを創ったと言われている。

ずっとビートルズに劣等感を感じていたのか、ブライアンの音楽的創造性が

一気に開花したのだろう。

作品同士を比較するのはとても難しいのだが、

どちらに軍配が上がるかと言えば、それはペットサウンズの方だと言わざるを得ない。

ラバーソウルは勿論名作である。

世界初のトータルアルバムだという歴史的意味合いもある。

しかし、ペットサウンズは別格だ。20世紀の音楽の中での最高傑作なのだから。

 

全曲傑作のペットサウンズに対抗できる曲が、

代表的に上記の2曲になるということである。